dancyu本誌から
dancyu4月号「バターでなくちゃ。」絶賛発売中!

dancyu4月号「バターでなくちゃ。」絶賛発売中!

dancyu4月号、禁断の「バター特集」は本日発売です!ちびちび食べても意味がない、口にするなら思い切って。後悔させないおいしさの、バターの名品、大集合です!

バター丸かじり

表紙
p16+17
p54
p88+89
dancyu2020年4月号
4歳の頃だったと思います。バターを塗ったトーストの美味しさに目覚めたのは。こんがり焼いた食パンの上で溶けかかったバターはすごく旨い。薄く塗っただけでこんなに美味しいのだから、バターをそのまま食べたら……。数日後、母親が買い物に出掛けた隙に、冷蔵庫からバターの箱を取り出し、台所の片隅に隠れるように座り込んで、バターの塊をおそるおそる齧り始めました。口の中で溶けながら広がる濃厚な甘味とコク。幸福感と罪悪感が入り交じった贅沢な味わい……(当時はそんな難しいことは考えず、ただ美味しいなぁと思っただけでしょうが)。
東海林さだおさんが「バター醤油かけごはん讃」というエッセイで「バターはたっぷし。ちょっぴりとたっぷしではまるでおいしさが違う」とお書きになっていたように、バターはたっぷりが旨い。昔も今も、贅沢感のある食材ですが、だからこそ、味わいがよりリッチに感じるのでしょうね。それをストレートに味わおうとした4歳児の実体験は、ちょっと無謀な挑戦だったかもしれませんが。
実際、三口ほど齧ったところで十分満足して(本当はちょっと怖くなって)、食べるのをやめて冷蔵庫に戻しました。箱から飛び出したまま、断面に小さな歯型がついたバターを見つけた母親には、もちろんすごく怒られましたが。

dancyu編集長 植野広生
dancyu2020年4月号
dancyu2020年4月号
第一特集:バターでなくちゃ。
第二特集:喫茶店のサンドイッチ

A4変型判(160頁)
2020年3月6日発売/ 900円(税込)

写真:竹内章雄